1月28日、国会が召集された。
天皇陛下は国会開会式への最後のお出まし。定例の健康診断のご日程を調整されて式に臨まれた。安倍首相の施政方針演説には驚いた。先頃、25回目(!)の日露首脳会談を行ったばかりだというのに、「北方領土」という言葉が1度も使われなかった。日露関係への言及は以下の通り。「ロシアとは、国民同士、互いの信頼と友情を深め、領土問題を解決して、平和条約を締結する。戦後70年以上残されてきた、この課題について、次の世代に先送りすることなく、必ずや終止符を打つ、との強い意志をプーチン大統領と共有しました。首脳間の深い信頼関係の上に、1956年の日ソ共同宣言を基礎として、交渉を加速してまいります」これで全文。見ての通り、「北方領土」という言葉は一切、出て来ない。ロシアが「北方領土という言葉は適当ではない」と言い張っているのを配慮した結果としか思えない。巧妙に「北方領土」という言葉を避けている。ロシアがそんな主張をするのは、盗人猛々しいとしか言い様がないものの、一先ずかの国の勝手。だが、我が国の首相がそれに歩調を合わせてどうする。これほど迎合的で本当に「領土問題を解決」できるのか。しかも、「領土問題を解決して、(その後に!)平和条約を締結する」というのは東京宣言(平成4年)での立場だ。安倍氏が「基礎」にするのは東京宣言ではない。それより遥かにロシア側に擦り寄った日ソ共同宣言(昭和31年)。こちらは「平和条約を締結して→面積7%の2島だけを引き渡す」という、我が国にとって極めて不利な内容(“→”の部分がスムーズに移行するかも不透明)。そんなものを「基礎」にして、一体どうやって「領土問題を解決して→平和条約を締結する」ことができるのか。明らかな矛盾だ。厚顔無恥な二枚舌でなければ、例の“負ければ解決”を狙っているとしか考えられない。「次の世代に先送りすることなく」とか、「交渉を加速」という表現は、安倍氏が自分の任期中に、何とか目先だけでも“手柄”を立てようと、「レガシーづくり」に前のめりになっている心理が、丸見え。その為には、肝心な「北方領土」という言葉すら隠す。プーチン大統領がこの演説を知れば、会心の笑みを浮かべるだろう。
画像:Timofeev Sergey / Shutterstock.com